チャットの起源

チャットの起源はインターネットの普及前にまでさかのぼることができます。いわゆる「パソコン通信」と言われていたころです。そのころは電話線を用いて接続されたパソコン間で通信を行っていました。その通信、コミュニケーションの基本は、やはり「テキスト」でした。テキスト情報はコンピューターの取り扱う情報のなかでももっとも基本的な情報です。

「文字」は古くから私たち人間の文明が生み出した基本的な情報伝達の手段です。「情報」を「記録」することができるようになったことで、私たちは物事を整理したり、それを誰かに伝えたりすることができるようになったのです。さらに、それはさまざまな「媒体」に記すことができるようになりました。例えば「石」、石碑などです。そして「布」や「紙」などです。それらの「媒体」に文字を記せば、記されたものは「情報」の集合体として意味を持つようになるのです。

布や紙は「腐食」します。痛み、やがては腐っていき、最終的には風化します。古来から使用されている媒体の中では「石」が圧倒的に耐久性を持っています。何千年の時を越えて私たちに思わぬ歴史の真実を伝えてくれたりするのです。このように「情報」は「劣化」するものです。情報が劣化し、媒体から情報が失われると、その媒体は何の意味もなさなくなります。私たちが歴史上の物事を知る手がかりは、このように記録にのこされた情報なのです。

「文字」は言葉を記号に置き換え、共通認識としてそのルールを理解し、情報を伝播することを可能にした発明です。文字がなければ私たちは自身のその「記憶」によってのみ情報を整理していくことになります。ですが、「記憶」は曖昧です。私たちは思い違いや物忘れなどは日常茶飯事のこととして受け入れているくらいです。だから「記録」します。メモを取ったり本を買ったりするのです。「チャット」はその文字を利用して相手とコミュニケーションを図る手段です。それが肉声であれば「会話」と変わりがありません。ですが、「声に出す」ことと「文字に記す」ことは別なのです。文字に記すことで、私たちは考えを整理することができます。自分の気持ちや感じていることを整理し、言葉に表すことは文字を使うからできることなのです。

パソコン通信で入力された文字による情報は、そのまま保存することが可能でした。デジタルデータ化された情報はいくらでも複製が可能です。そして保存している媒体が破損しないかぎり、劣化することもありません。デジタル化することで情報は永遠に増殖していくことができるようになったのです。そしてそれらの情報は複製が自由自在です。文字によるコミュニケーションは一方の端末で入力した情報を他方の端末でも共有することでもあります。それが電話回線、インターネット回線で送信されることが可能になったときから、「情報化社会」の扉は開かれたのです。現在では当たり前だとされているインターネットも、最初は単なるパソコン通信でした。そしてそのパソコン通信では「テキスト」が用いられていました。パソコン通信で行われていた「チャット」は、まさにインターネット時代の幕開けを予感させるものであったのです。

 

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